感染症でありDNAウィルスでもあるヘルペスは、核を持つ細胞のほとんど全てに存在し、その数は何と100種類にも及ぶと言います。
その中の8種類が人間に感染するヘルペスウイルスであり、感染するウィルスの種類により起こる症状はさまざまなことが分かっています。
ここでは、ヒトに存在する8種類のヘルペスウィルスの中でも、かかりやすい感染症として代表的な3つのヘルペスについて、その症状や潜伏期間、感染経路等について詳しく調べてみました。
目次
単純ヘルペスウィルス1型
8種類あるヘルペスの中でも、単純ヘルペスウィルス1型には日本人の50%から70%が感染していることが分かっています。
一昔前までは、多くの子供が気付かぬ内にヘルペスに感染し免疫を持っていたため、再発しても軽症で済んでいましたが、最近では衛生面の向上や急速な核家族化の影響により、子供や若い世代の人たちの感染が減っていることが分かっています。
単純ヘルペスウィルス1型の症状
単純ヘルペスウィルス1型は、唇や口の周りや顔面など、主に上半身に症状が出ることが多く、口の周辺に水ぶくれができる「口唇ヘルペス」、口の中に口内炎が多数できたり歯茎が腫れて痛みが起きる「ヘルペス性歯肉口内炎」、アトピー性皮膚炎の人が単純ヘルペスウィルスに感染して起こる合併症「カポジ水痘様発疹症」、ヘルペスウィルスが目に感染して起こる「ヘルペス角膜炎」があります。
中でも、口唇ヘルペスは特に多い疾患であり、30代の日本人はおよそ半数、60代以降になるとほとんどの人が口唇ヘルペスにかかったことがあると言われています。
ヘルペスウィルスの大きさは、1ミリの1万分の1くらいの大変小さな生き物であり、核酸(DNAまたはRNA)とたんぱく質のみで形成されています。
このウィルスは自分の力で子孫を作りだすことはできないため、他の生き物の体内に入り込んで細胞の組織を拝借しながら自分のコピーを作っていきます。
単純ヘルペスは、一度感染すると一旦症状は治まったとしても、ウィルスは体内の神経節に一生棲みついて消えることはなく、心身ともに健康状態の時はじっとその身を隠していますが、いざ体調を崩したりストレスや疲労の蓄積により免疫力が低下した際など、隙を見ては再発する機会を常に狙っています。
単純ヘルペスウィルス1型の感染経路と潜伏期間
感染経路は、他の感染者を介しての飛沫や接触によるもので、潜伏期間は2~10日です。
単純ヘルペスウィルス2型
単純ヘルペスウィルス2型には、日本人の5%から10%が感染していると言われる疾患であり、そのほとんどが性器ヘルペスと呼ばれるウィルスです。
こちらのウィルスも一度感染すると、身体から消滅することはなく、再発を繰り返す特徴があります。
体調不良やストレスなどで免疫力が低下している、月経前のホルモンバランスが乱れている時期、性行為により性器の皮膚に摩擦や損傷がある場合、深酒喫煙、強い紫外線を浴びた後などは、再発の可能性が高くなるので注意が必要です。
単純ヘルペスウィルス2型の症状
性器ヘルペスの主な症状としては、性器やお尻周辺の水ぶくれです。
その後、水泡が破れて皮膚がただれたような状態になりますが、男性に比べて女性の方が重症化するケースが多く、性器や太もも、リンパにかけて激しい痛みを伴う場合があります。
痛みがひどい時は排尿困難症や髄膜炎を引き起こす恐れもあるため、相手に性器ヘルペスの徴候が見られる時は性行為自体を避け、症状が出ていない場合でも必ずコンドームを使用する、オーラルセックスをしないなど、リスクを回避することを心がけましょう。
単純ヘルペスウィルス2型の感染経路・潜伏期間
口唇ヘルペスが飛沫や接触感染なのに対し、性器ヘルペスは主に性行為から移る感染症であり、それ以外では移ることはありません。
ただし、口唇ヘルペスの人がオーラルセックスや患部を触った手で相手や自分の性器に触れた場合などは、性器ヘルペスを発症する可能性があります。
性行為で感染してから2日から12日ほどの潜伏期間を経て発症します。
水痘・帯状疱疹ウィルス
日本でもよく知られる伝染病の1つである「水痘(水ぼうそう)」の原因となるのが、ヘルペスウィルスの”水痘・帯状疱疹ウィルス”です。
水痘・帯状疱疹ウィルスの主な特徴は、何と言ってもその驚異的な感染力であり、道ですれ違っただけでも感染したり、免疫を持たない兄弟間ではおよそ9割の確率で感染することも分かっています。
水痘・帯状疱疹ウイルスの症状
主な症状は、個人差はあるものの、38度前後の高熱と全身に数十個から数百個ほどの水ぶくれや発疹ができます。
水ぶくれは通常1週間ほどでかさぶたになり、その頃には感染力も弱まり、2週間程度で症状は治まります。
しかし、他のヘルペスウィルス同様、こちらのウィルスも決して消滅することはありません。
何十年も神経節に留まりながら、加齢や体調不良などで免疫力が落ちてきた頃に、今度は「帯状疱疹」となって発症することがあります。
帯状疱疹とは、身体の片側部分のみ痛みを伴った発疹や水ぶくれができる疾患であり、主に高齢者や神経質な人、糖尿病や膠原病を患ったことのある人に多く起こると言われています。
また、帯状疱疹は水ぼうそうに比べて、治りが遅いことが大きな特徴でもあります。
通常は、発症して3日から5日程度で赤い発疹が現れて、その2日後くらいには水ぶくれができてきますが、これらの症状が投薬などで治まってきたとしても、痛みだけは1カ月から数カ月残る場合もあります。
この痛みは帯状疱疹後神経痛と呼ばれており、高齢になればなるほど長期間痛みが残って苦労する場合があります。
帯状疱疹後神経痛は早い治療が軽症に導く近道であることは間違いありませんので、皮膚に違和感を感じたらできるだけ早めの受診をおすすめします。
水痘・帯状疱疹ウイルスの感染経路・潜伏期間
他の2つのヘルペスウイルスと異なり、水痘・帯状疱疹ウイルスは空気感染します。また、潜伏期間は約2週間と言われています。
まとめ
ヘルペスウィルスと一言で言っても、種類によって症状や感染経路は違ってきます。
とはいえ、ヘルペスを治す上で共通して言えることは「早期発見・早期治療」が基本です。
ヘルペスの正しい情報をきちんと把握することで、症状の悪化を防いでヘルペスウィルスに負けない身体づくりを心がけて行きましょう。