「ヘルペス」というと唇や陰部にできるもの、というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?もちろんそれも間違いではないのですが、実はヘルペスは、角膜に症状が出ることがあります。
これを「角膜ヘルペス」と呼ぶのですが、これは一体どのような疾患なのでしょうか。ここでは、角膜ヘルペスについて詳しく解説します。
目次
角膜ヘルペスの概要について
角膜ヘルペスは、角膜に「単純ヘルペスウイルス」というウイルスが感染することによって発症する病気です。
ちなみにこの病気の原因となるウイルスは特別珍しいものではなく、多くの方が知らない間に感染していると言われています。
実際、70~80代の方を対象に実施した調査では、ほとんどの方が単純ヘルペスウイルスを保有しているという結果が出ています。
つまり角膜ヘルペスは、誰でも感染・発症する可能性がある病気であるというわけですね。
そしてこの角膜ヘルペスはウイルスの感染部位によって「上皮型」と「実質型」の2タイプに分けられ、どちらの型なのかによって症状も変わってきます。
角膜ヘルペスの症状
では、角膜ヘルペスを発症した場合、具体的にどのような症状があらわれるのでしょうか。ここからは、角膜ヘルペスの「上皮型」と「実質型」、それぞれの症状について詳しく見ていきましょう。
上皮型角膜ヘルペスの症状
角膜はいくつかの層が重なって構成されているのですが、その一番外側にある「上皮層」にウイルスが感染・増殖して活発に活動している角膜ヘルペスを、「上皮型角膜ヘルペス」と呼びます。
このタイプのヘルペスを発症すると角膜に木の枝のような形をした症状があらわれます。上皮型の角膜ヘルペスを「樹枝状角膜炎」と呼ぶのは、このためなのですね。そして上皮型角膜ヘルペスになると、
・目が赤くなる
・目に軽い痛みを感じる
・光に敏感になる、光をまぶしく感じる
といった症状があらわれます。
実質型角膜ヘルペスの症状
角膜に単純ヘルペスが感染すると、上皮層よりも内側にある実質層において免疫反応が生じて炎症が起こることがあります。この状態に至ったものを「実質型角膜ヘルペス」といい、
・角膜が丸く腫れる
・角膜が濁る
といった症状があらわれます。
角膜ヘルペスの治療法
角膜ヘルペスの治療は、薬物療法によって行われます。
まず上皮型角膜ヘルペスの治療法についてですが、このタイプのヘルペスは比較的症状が軽いため、単純ヘルペスウイルスに対して効果を発揮する抗ウイルス剤を使い、ウイルスの増殖を抑制します。
またそれと同時に抗菌作用がある点眼薬を投与し、細菌感染を予防する治療も行います。
これに対して実質型角膜ヘルペスの場合、抗ウイルス剤と同時にステロイドも投与し、ウイルスの増殖と角膜の炎症を抑制する治療を行います。
基本的にはこの地領によって症状が改善していきますが、角膜の潰瘍が慢性化したり角膜の濁りが原因で視力が低下したりしている場合は、角膜を削る治療や角膜移植が必要になることがあります。
角膜ヘルペスはうつるのか!?
口唇ヘルペスや性器ヘルペスを発症した場合、症状が出ている間は人に感染させないよう細心の注意をはらう必要があります。
では、角膜ヘルペスも他のヘルペスと同じように、人に感染してしまうのでしょうか?
同じ単純ヘルペスウイルスが原因となっている病気でも、角膜ヘルペスに関しては人にうつることはほとんどありません。
また角膜ヘルペスの症状はどちらか一方の目に発生しますが、もう片方の目に移ってしまうということもほぼありません。
そのため自家感染や他人への感染については、そこまで神経質にならなくていいでしょう。
ただし、産後の方や高齢者など体の抵抗力が極端に低下している場合、角膜に感染したヘルペスが網膜や脳に感染してしまうことがあるため注意が必要です。
角膜ヘルペスも再発する!?
角膜ヘルペスは、抗ウイルス剤等による治療を受けることでその症状を改善することができます。
ただしこの病気には非常に再発しやすく、角膜ヘルペスを発症した方の4人に1人は、1年以内に再発していることがわかっています。
というのも単純ヘルペスウイルスは一度感染すると体内から完全に追い出すことができず、症状自体は治まってもウイルス自体は「三叉神経」の根元部分に潜伏しています。
そして何らかのきっかけでこのウイルスが活発化すると、角膜ヘルペスを再発してしまうのです。
上述のように角膜ヘルペスは症状が酷くなると角膜移植が必要になることもありますので、少しでもおかしいと思う症状があればすぐに眼科を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
角膜ヘルペスが再発しやすいのは以下のような場合ですので、十分注意しましょう。
・ストレスが溜まっているとき
・過労
・病み上がり
・月経時
・体の抵抗力が下がっている時
まとめ
角膜ヘルペスは、悪化させると視力の低下を招くこともある厄介な病気です。そのため角膜ヘルペスが疑われる症状があらわれた場合はできるだけ早く眼科を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
また角膜ヘルペスは口唇ヘルペスや性器ヘルペスと同様再発しやすい傾向にありますので、体力が弱っている時は再発にも気をつける必要があります。